サドルの作製とオクターブ調整

サドルはピッキングや調弦による摩耗、温度・湿度によるトップやネックの変動に伴う弦高の変化、経年劣化による音質の変化が生じた場合に交換するケースが多いと思います。


交換をするときにサドルのトップを見て、深いくぼみが出来ていて、少し弦高が下がったな、ちょっと音が変わったナーと感じたら、サドルの原因も考えられます。

サドルは消耗品です。

 

自分で作成する場合は現在のサドル厚を調べて、なるべくその厚さのものか、ほんの少し厚いものをサンドペーパーなどで削れば簡単にできます。


 

サドルは弦振動を受ける大切な部分ですし、オクターブ調整を考えると厚いものが良いのですが、3mm位が一般的です。手工品では45mmのサドルもあります。

 

外国製のアコースティックギターのサドル厚は1/8インチ(3.175mm)ですが、時折薄い3/32インチ(2.38mm)も見かけます。たぶんタスク製品もインチサイズだと思います。

国産ギターでも海外の工具を使っている場合が多く、インチサイズが一般的だと思います。


原寸に合わせて型どりをします。


のこぎりやヤスリで切り出します。


厚さが整ったら、サドルの端を丸く削ってブリッジの形状にジャストフィットするようにサンドペーパー等で形を整えます。

この時、最初は荒いサンドペーパーで、最後は細かなサンドペーパーで形を整え、コンパウンドで磨きます。


もちろん、サドルの底面が平らになっていることが最も大切です。

 

おっと、その前にブリッジの中をよく見て底面が平らになっているか、ゴミや埃がないか確かめて下さいね。

 

すり減ったサドルがオクターブ調整されている場合は同じようにサドルの各弦のトップを同じように形成すれば良いのですが、オクターブ調整されていない場合はサドルのトップの位置を決めなければいけません。

まあ、特にオクターブなんて気にしないという方はそれでも良いのですが、8フレット以上の高い音を弾いたり、ハイコードを押さえたりする場合はオクターブ調整をお薦めします。

 

さて、ここからがチューンナップ第一弾、オクターブ調整、略してオタク?調整です。

 

一般的なオクターブを調べるには、先ず開放弦でチューニングを合わせた後、第12フレットを押弦してチューニングが合っているかどうかを全ての弦で確認します。ハーモニクスじゃないですよ、押弦です。

 

12フレットは開放弦の音の1オクターブ高い音になります。いくら、自分は音感が良いからといってもチューニングメーター(チューナー)を使いましょう。


レギュラーチューニングで6弦の開放弦はEですから、6弦の第12フレットもEです。でも、チューナーの針を見るとピッタリと合うことはあまりないですよね。全ての弦を調べてみるとほとんどの場合♯しますね。押弦すると♯する。当たり前ですね、張力が強くなるのですから・・・・これが、オクターブピッチのズレなのです。

特に6弦と1弦はピッチのズレが大きいように思います。

 

2弦はどうかな? まあ、妥協の範囲ですか。

実は、この微妙なピッチのズレが和音になると気持ちの良い揺らぎを感じるんですね。これは、コンピーターなどの電子和音では出せない音なのです。

 

しかし、極端にオクターブピッチがずれると、不協和音になってしまいます。当然、人工ハーモニクスも上手く出ません。

 

こんな場合は、サドルの形状を加工して、可能な限りオクターブチューニングを合わせる必要があります。

 

一般的なサドルの厚さは2.5mm3.5mm、手工品などでは5mm以上のものもあるようですが、この厚さの中で弦との接点を調整します。

オクターブの音程が高い場合は、ナットからサドルまでの長さを長くして音を下げる(ピッチを下げる)必要があります。だから、下の図のようにネック側を削って、弦長を長くします。

逆にオクターブの音程が低い場合は、ナットからサドルまでの長さを短くして音を上げる(ピッチを上げる)必要があります。だから、下の図のようにヒップ側を削って、弦長を短くします。


ギターのナットを図にして各弦のサドルの高さ、位置などをギターカルテとして作っておくと次回に作るときに役立ちます。

 

ギターメーカーではタスク製のサドルのように出荷時にサドルの2弦の接点部分をヒップ方向に形成してセッティングしているギターが増えてきましたが、安価なギターではサドルのネック側を弦との接点にしているギターもあります。

 

サドルは弦高調整をするだけではなくオクターブ調整もする大切な部分ですね。

 

 

サドルには調整年月日を記入し、取り外し用に6弦脇に1mmの穴を開けます。ジャストフィットしたサドルを取り外すときにはこれが結構役立ちます。

 

チューンナップ第二弾です。

 

下の写真は調整済みのサドルです。弦との接点に注目して下さい。

 

 

12弦は点接触、3弦以上は出来るだけ面接触にしてあり、ブリッジからサドルまでの挿入角度も1弦から6弦まで均等になるようにブリッジに導線を切り込んであります。

 

 

最後にコンパウンド磨いて完成です。

 

 

弦とサドルやナットの接点は音色やテンションに影響します。各弦のバランスの取れたギターは弾き易くて、音の良さを実感して頂けます。

 

 

 

ただ、極端なオクターブチューニングの狂いはナットでは直せませんので、プロショップに依頼しましょう。

 

 

 

サドルには調整年月日を記入し、取り外し用に6弦脇に1mmの穴を開けます。ジャストフィットしたサドルを取り外すときにはこれが結構役立ちます。

 

 

参考写真です。1本のギターに3本のサドルを用意してあります。出荷時のサドルと合わせると4本になります。

 

写真の左上からメーカー出荷時のサドル、象牙で製作したサドル、アンフィニ・カスタムワークスで製作したサドル、今回新たに製作したサドルです。

 

3本のサドルは各々0.30.8mm-程高さを変えてあります。

 

コメントをお書きください

コメント: 6
  • #1

    kan (水曜日, 13 1月 2016 16:52)

    これは約に立ちます
    参考にさせて貰います

  • #2

    ケンタロウ (木曜日, 18 2月 2016 12:02)

    ミニギターのオクターブ調整が上手くいかず。
    手持ちの厚いプラを切り出して5ミリのオフセット型の物を作りましたがなかなか安定せず難しいですね。
    元来がナットの位置が悪いのか(1カポでは安定)
    再度こちらを参考させていただきに作り直してみます。

  • #3

    deiqun (火曜日, 16 5月 2017 23:27)

    このぺーじのおかげで、ここ1月ぐらい悩んでいた音の違和感がすっとび 楽しくなりました。あーざす。

  • #4

    sonchou (水曜日, 02 8月 2017 18:28)

    Good Advice! Thanx mate!

  • #5

    ゴダン傘下の古いアコギ (日曜日, 01 4月 2018 17:51)

    ヤフオクで申告ナシのジャンク品を競合の末落札してしまい、悩んでおりましたが、こちらを参考にさせて頂き救われました。大変感謝しております。ありがとうございました。

  • #6

    yossie (月曜日, 29 10月 2018 23:05)

    購入したウクレレのオクターブチューニングに悩み、こちらにたどり着きました。
    サドルを限界までおしり側に削っているのですが、12fの音が高いのです。
    こういった場合、何か手はあるのでしょうか?あきらめるしかないのでしょうか?